半夢人2009-11-09 16:59:16
北野武主演の「点と線」
11月8日日曜日、松本清張生誕100年記念バージョンの「点と線」が放映された。同じ作品を2年前に見ているが、前に見た時とは、違う印象で長い時間テレビの前に座っていた。2年前の作品にしては、北野武は若く、高橋克典も若く、夏川結衣は美しく、太りすぎた江守徹は文字通り重量感があり、多くの大物タレントが要所を引き締めていた。さすが、記念作品である。
東京駅15番線ホームの4分の空白がドラマを貫く。空白の4分間からドラマは始まる。誰も気付かないような4分の空白を利用して、エリート夫婦が知り過ぎた男を殺す為の完全犯罪の目論見が始まる。福岡の香椎海岸の男女の死体は、明らかな心中事件と思われた。心中事件として処理されるはずの完全犯罪の謎が、福岡県県警の偏屈刑事の執拗な捜査で解き明かされる。妻が作ってくれたへんてこりんな形の帽子を大切にする田舎刑事の執念は、完全犯罪を覆すために、東京から青森、青森から青函連絡船で北海道と、日本列島を縦断する。香椎の海岸の見事な描写に感動したというある女性の言葉に従って、文庫本を買ったのも、記憶の底に沈んでいた。香椎海岸の見事な描写は本を読まなければ味わえない。文章の描写を、映像では表現できない。ドラマの香椎海岸の風景には本を読んで味わう感動的な場面はない。西鉄香椎駅と国鉄香椎駅の間で、北野武と高橋克典の姿が浮き上がっていたが、それもまた、仕方ない。文と映像の違いは当然だ。そんなことを考えながら見る「点と線」は二度目でも新鮮さがあった。北野監督作品も、北野武主戦作品も好きでないが、大久保清は見事だったし、鳥飼刑事も見事だった。オートバイ転倒事故での顔の怪我が新しい魅力となった。事故でつくられた憂いの他に、切れ味鋭いが鈍い光沢の刀を秘めているようだ。大きくない目動かぬ目に時たま見える顔の痙攣が良い。
松本清張生誕100年記念の今年は、幾つもの作品が話題になる。「点と線」に「ゼロの焦点」「砂の器」が松本三部作といわれるらしいが、松本清張作品は実に多い。多くの作品がドラマになり映画になることを期待する。監督によって、出演者によって、独特の人物像が作られ、新鮮さを感じさせ、以前に見ている作品でも、何度も読み返している作品でも、違った魅力で迫ってくる。それが松本清張作品のような気がする。原作を読むと、映画やドラマに、何処となく違和感も感じるが、そんなことも感じなかった「点と線」であった。