
秋が深まってくると思い出すのが千枚漬け。京都の代表的な冬の味わい。ここ数年はシーズンに入ると必ず取り寄せて楽しむレギュラー食品のひとつ。
かつて横浜の元町梅林で一緒に働いていた子がさらに勉強をと京都に旅立った。彼はしょうちゃんと同じく調理場で。
そして接客のアルバイトの良く気のつく可愛らしい女の子をお嫁さんにしてふたりで京都での新しいスタートを切ったのだ。
彼女は本当に素敵な子で店が終わってから食事をしたりするほど気が合っていたので お祝いする反面で寂しさと優秀な人材を失うのとがごちゃまぜのなたりだった。もう10年近く前の話よ。
そんなふたりから贈られた千枚漬け。ねっとりと昆布の旨味がからまってなんとも言えない。幾重にも重ねられたかぶらの味わいが深まって行くのは人生のようね。
お漬物の美味しさがわかるようになったのはいつだろう。子供の頃はあまり得意ではなかったと思う。
ただ妹は梅干しでも白菜漬けでも食べていたから食卓にのぼってはいたんだろう。
食べ物の好き嫌いが多い食の細いひ弱な子供が こんなに立派な脂肪を蓄えたなんでも食べちゃうオバサンになろうとは…。
今日みたいな雨の日はフッといろんな事を思い出す。
千枚漬けを贈ってくれたかつての同僚カップル。可愛い坊やに恵まれた彼女は横浜の実家に戻ったと聞いた。
京料理の名店で輝かしいポジションについた彼はそのお祝いと新年会を兼ねた宴の帰りに事故で天に召されたらしい。彼もまた無言で生まれ育った横浜へ帰って来ている。
彼女どうしているかしら。何を話したら良いのか思い付かず お墓に参れてもいない。時が来たらきっと会えるんだろう慌てなくても まだその時じゃないんだろうなって勝手に思ってる。
そんなこんなを思いながらの雨の午後です。